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ガチで話そう、
被災のリアル。
西日本を襲った記録的豪雨から2か月。当初7月13日に予定されていた第1回ガチ対談は、
メンバーの病院が被災したため、9月18日にようやく実現。テーマはガチで「被災」とした。
被害も立場も異なる6人の実体験と本音がクロスした60分。
問題発言、あるかもしれない。炎上要素、ないとは言えない。
そんなリスクも承知の上で、リアルガチでの全公開。
願わくば一人でも多くの人に読んで、知って、考えて欲しい。
「その時」は、誰にも、必ず、やってくるから。
ありし日の「まび動物病院」
被災の様子はオモイのブログで
いちばんこたえたこと

今回、一番こたえたことで言うと…伊達ちゃん、どうですか。

一番こたえたのはもう、間違いなく「生活が奪われた」ことですかね。生活、仕事を奪われたこと。まび動物病院での阿美古の仕事がなくなったっていうのは結構こたえた。病院が一個潰れるとかはまぁいいんですけど、仕事はないと生きていけないんで。仕事がなくなったことっていうのは思ったより辛い。生き甲斐を失うというね、その瞬間はあったかな。個人的にこたえたのは、やっぱ阿美古がそういう精神状態に陥った時に、それすら支えないといけない、もうどんな状況でも働いて働いて、下世話な話、少しでもお金稼がないと結局誰も養えないというか。給料面のことは心配した。体力的にもキツかったね。まびの患者さんも流れてきて、対応して、動物もいっぱい来て、いろいろあって。

藤岡先生はどうですか。同じ市内でそういう被災があって。

実際のところ同じ倉敷だったんだけれども、どれくらいの災害状況なのかを把握することがまず僕らが最初にすることなのかなと。で、その次に、やれることをセレクトしてやっていかないと、と。でも最初の段階で今回の深刻性っていうのを把握できなかったっていうのが正直あって。ニュースでそういう映像がたくさん流れてきて、これは大変なことになったなって。伊達ちゃんのとこと妹尾先生のとこと阿美古先生のとこを最初に思った。けど、どうやって動いたらいいのかわからなかった。それから徐々に情報が入ってきて、これは同じ倉敷だし、活動としてやっていかなればいけないって思ったけど、初動としては、どうしたらいいかわからないっていうのが正直なところだった。

小野先生はどうですか。

うちも実害はなかったんで最初は他人事みたいに見てたとこ正直あるんですけど、まあ身内が浸かっちゃったっりっていうのはあって。で、次の日かな、二日後かな、伊達っちからLINEで阿美古先生の今日みたいなのを見せられた時は…衝撃を受けたね。腰までの水の中を歩いてる写真。あ、ヤバイって思って。でほんと、被災地域を見たっていうのが初めてのことやって。被災があった次の水曜日、病院が休みで手伝いに行こうと思って家の近くのホームセンターで道具揃えて、いざ総社の川を越えて、そしたら一気に景色が変わった。あの瞬間、あ、何だこれって。天国と地獄。川のこっち側ではもう和気あいあいじゃないけど普通に買い物なんかもしてるのに、川渡ったとたん家はボロボロで、あ、これが被災した地域っていうもんなんかと。あれは…かなり衝撃的でしたね。実際、病院見たらボロボロだし、水浸しだし、器具とかもワヤで、どっから手つけてええんかわからんやろなと。たぶん本人は、当の本人だからこそ、できないやろと。で、とりあえず機械出そうやってなったけど、ああいう状況見せられたんは初めての経験やし、これが被災ってもんなんやなと痛感させられましたね。精神的なダメージ、大きかったです。

実際、今回の豪雨災害は地域によって温度差が大きかったなっていうのは思ってて。地域によっても全然被害受けてない地域と受けた地域があって。僕自身は自分の家が実際に床下浸水しちゃったんで、あ、これは危ないなというのはあったんですけど、でもあの日、7月6日の夜はOMOIの会議の日だったじゃないですか。で、ギリギリまで会議しよっかみたいなこと言ってて実感がまだなかったんですけど、その2時間か数時間後に、そういう状況になってたっていうのが…。翌日になって、うちのスタッフの中にも車が動かないっていうのがあったり、自分もこの状況だと病院に行けないってなって、でも中には全然大丈夫っていう人もいたりして、割と温度差があったんで、そこでの初動がどうだったのかなっていうのはあったと思うんですね。まび動物病院に、江畑先生、橋本先生も一緒に手伝いに行った時に、僕が一番思ったのは、これだけ頑張って建てたものが一晩で〝雨〟で崩れるんだっていうこと。それがすごくショッキングでした。地震とかじゃなく、ただの雨なんだって。それを目の当たりにした時は呆然として。

僕は水曜に小野先生と(まびに)行ったんですけど、いったん迂回しなきゃなんない道に最初入っちゃって、そしたら車がひっくり返ってるやつがいて。そういうの見て何これって。行っていいのかなって思って。でも行ってあげたいし、でも迷惑かもしれないし、阿美古先生の気持ちが僕はそこまで分からないから、どんなテンションで振る舞っていいかわかんないんですよね。励ましたり、何とかなるよねみたいなこと言った方がいいのかわかんないし、そういうのがね、どういうふうに話しかけていいのか、何やったらいいのかがよくわかんないんだけど何かやってあげたいんだけどみたいなのが一番悩みましたね。こたえたことっていうことで言えば、僕はただただショッキングだったってことになるんだろうけど。想像してなかったから。あの映像は…衝撃的でしたね。

江畑先生はどうですか。

こたえたこと…は正直あんまりない、かな。こたえた、自分が辛いとかいうのは正直あんまりない。けど、辛くなってる人を見るのが嫌だったかな。僕らは働き出した頃に東日本の震災があって、あの時は何かしようと思って物資持って行ってとかあったけど、それが果たして実際にどれだけどうだったのかとか、広島の時も特に何もしてないし、そういうのもあって。今回、実際に手伝わせてもらって、行ってみて、何をしていいか、阿美古先生と伊達先生に何を話しかけていいのか、わかんない。わかんないんだったら体動かそうと思ってやった。仲は良くてもこういう時ってほんとに言葉ひとつで相手を傷つけてしまうかもしれないって思ったら、あんまり何か言えないなと。

岡山県獣医師会の即対応

今回、獣医師会がすごい素早い対応をしてくれたんだなと思うんですけど、ご存知のとおり、うちの母親が対策委員長をやってて。東京のがん学会に行けなくなってちょうど時間があったっていうのと、阿美古先生から直接連絡があったんですぐ現場を見に行ってくれて、どれだけの人が困ってるかっていうようなことを聞いてきくれてすぐに対応してくれたっていうのがあったんですよね。6日が確か金曜日で、7日に行ってもらって、じゃあ月曜から本格的に何かしていこうって形で8日に集まってくれて、それで第一報が出たと思うんですけど。現場を見に行ってくれる人がいなかったら対応が遅れてたかもしれないし、もしかしたらできてなかったかもしれないし、対応を迫られてから動いていた可能性ってのもあったかもしれないなと思ってて。最初の、何だったっけあれ、巡回診療で預かるみたいな?

いや、巡回診療じゃなくて、「被災動物を無償で預かります」って。それをFacebookで知ったんですね、第一報。岡山県獣医師会がそう言ってると。それはビックリしてほんとに。聞いてないし! と思って。

月曜の夜中に見て、これは何なんだって。ハッシーと伊達ちゃんとLINEしてて、話しようかって。その時にはもう被災動物がブワッと集まってきてて、その状況でこれしか補填されないのかっていうのがあったと思うんですよね。一日預かりで千円前後ですかって。それでどうやってやっていくんだろって。

うん、ま、うちみたいなところは特例っていうか分院だったから、うち(だて動物病院)は普通に機能してて、妹尾先生のとことは違ってて。ただ、一つ病院がなくなって、そこを支えていかないといけないって時にそういうふうに言われちゃうと金銭的にも仕事量的にも結構辛いなと。でも、そこで騒いでも病院の評価落とすだけかと思って、もう頑張るしかないと。

やっぱり初動は大事。東日本の時も後から後から言われてたじゃないですか、対応がどうのこうのって。で今回、穴はなかったのかって言われれば、きっとあら探しすればあるのかもしれないんですけど、今のところ出てないし、みんなで協力して何とかやってる。それはやっぱり地元がつながってたからかなと。小野先生、どうですか。実際、他の地域でこれがあった時に、顔を知っていないとただ文句しか出ない可能性もあったかと思うんですよね。あの人がこう言ってるんだから支えてあげようみたいな感じ、日頃からコンタクトをとっていたからこそできたのかなと思ってて。でも今回はたまたまそういうふうにできたから良かったけど、これから先はどうなのか。事前の準備っていってもそんなに用意周到にはできないし、陣頭指揮をとる人間がポシャッてしまった時に、動けない、誰も何もできない、そういう時にみんなでどういうふうに考えていくかっていうことかと思うんですけど。

やっぱり仲間意識とか横のつながりって大事ですよね。商業的に考えると近くの病院は敵や、商売敵やって考えがちですけど、同じ業界で生きている我々で、業界全体を盛り上げて支えていかないとならないし、いちいち敵対せずに協力関係にあるっていうのは大事だと思うし、必要やと思ってて。まびに関しては本院ていうのがあったから誰かに助けを求めることなく本院に戻ってそこで仕事を見いだすことができたけど、たとえば俺みたな獣医師一人の病院がポシャッた時には宙ぶらりんですからね。その時どうするねんて話になるけど、でも何となく大丈夫だとは思うんです。誰かおってくれるから。そういうふうな安心感じゃないですけど仲間内っていうのはやっぱ大事やと思います。一緒にダラダラするだけじゃなくて切磋琢磨する仲間内。今回の岡山で連携がとれたことの深層心理の中には「この人が言ってるんやから、じゃあやろう」ってのがあったと思うんです。もちろんあまり乗り気じゃない人もおったかもしれないですけど。ま、ここで出していい話かわからないですけどお見舞い金とかもね、額は少ないですけど、協力してくれた人がおるってことはすごいことやと思うんです。(自分が)まとめさせてもらいましたけど、40人規模で協力してくれましたから。横のつながりって大事だなと思いました。

連携することの難しさ

実は今回、阿美古先生のところだからってのもあったのかなと思ってて。倉敷市内で実際、横の連携があるかと言われたらそうではないところがあって、今回は県獣が早くから動いてくれたっていうのがあるんですけど、倉敷の、そこまで関わりがない病院がもしそうなった時に親身になって関われるんだろうかというのがあったり。普段から顔も知らない病院に対してね。

うーん、でも例えば獣医師会主催の勉強会とかに自分から行こうとしたりする人達であれば、そうなった時でもたぶん孤立はしてないはずだと思うんですよね。今回の一連の動きが良かったていうような話があったけど、実際、僕とか橋本先生とか倉敷で勤務医してて色々とFAXとか送られてきてるので見てたけど、すべてが良かったのかっていうと、それはまだ検証されてないから。いつかどこかでする機会があるだろうと思ってて。今度の獣医師会のセミナーとかね、きっとそういう話になるかなと。

そうですね、する予定にはなってますね。

自分は実際そこまで関わってはいなかったっていうのがあったからかもしれないけど、すごい良かったっていうことと、ぼやっとしてしまったなって思うことがあって。僕、倉敷支部の話し合いに院長のかわりに行かせてもらったんだけど、「倉敷支部は岡山支部の結果を待って動きましょう」みたいな、「それまでは個人で」ってことになって、え、個人でってどういうこと!?って。今思うと、あの時すぐ動かなきゃいけなかったんじゃないかと。だから僕個人としては今回の件がすごくうまくいってるとは思わなかったというのが正直な印象。たとえば、預かってる被災動物にしても、いつまで預かるのかってことを訊かなければ、僕らの病院の、面倒みてもらってるスタッフ達にも伝えてあげられない。スタッフ達の子はすごい可愛がってくれてて、なのに何かそういうぼやっとした意見で。あれがもし全体の病院の一人一人に全部伝わっていたらもっとうまくいってたんじゃないかなと思ってる。僕の個人的な実感としてはそんな感じ。

実際にはトップの人達も日に日に変わる状況の中で指針を出せなかったというところがおそらくあるのかなと。うちの病院でも、これいつまで続くんだろ、入院室ほとんどつぶれていくなっていう状況の中で、じゃあこれでまた忙しくなった時にこの子達どこにもっていこうかって確かに不安に感じた部分もあった。今回はふたを開けてみれば岡山市が中心になってたのかなと思うんですよね。被害が割と少なかったというのもあるかと思うんですけど、話自体が県獣の中心のところでやられてて、手伝いに行ってる先生達も岡山市の人ばっかりなんですよね。倉敷市はやっぱり受け身になっちゃってたのかな、実際に陣頭指揮する人がいなかったのかなと思ったんですけど。ほんとはそこは県獣と倉敷市が一緒になって、そこに岡山市も加わっていけたら良かったのかな、みんなで負担を分散できたのかなとは思うんですけど。被災後の預かりの動物の世話に関しては確かに先が見えない部分があったんだけど、それはもうしょうがないことなのかなって。実際にみんな誰も先が見えてなくて、もしかしたらもっとすごいことが起きるかもしれないって中で、被災してる人達も僕たちも指揮してる人達もわかんないし、その中でできることをやりやすいところからやるっていうのが一番大事なのかなと思ったんですけど。

実際、最大でどれくらい預かってたの?

8頭か9頭。今はもう1頭だけですね。

うちは最大で15、16頭。

あのスペースで…

スペースは、どんどんつくってって。猫だったら3段のやつをスタッフの家からもってきてもらって、2匹ずつとか。ケージなんてストレスになるからいつまでもいれてらんない。そんなんでずっと見てましたね。

うちは4、5頭だけかな。

うちも5頭やけど二人はもう早めに帰らして、まあ被災がそこまでやない地域やったから、ストレスになるから早めに帰った方がいいよって。まあちょっと怒りん坊さん(の子)やったんで。

近いところに(預けに)来るってのは、まあ絶対わかるじゃないですか。けど言ってるのが岡山市内の先生やから、ギャップはちょっとありましたね。大丈夫かなぁと思って。しんどいなぁって。岡山にもっと来いよとか、こっち空いてるよとかの情報発信はまったくないじゃないですか。倉敷市しかなかったですよ、確か発表。この病院で預かってますていうの。近くの方が患者さんにとってはもちろんいいんだろうけど、結構それぞれの病院で「いや、うちもう預かれないし」とか「どうしよう、問い合わせ来たら。断らないといけない」みたいなのがありましたよ。

救急車みたいな、救急病院の受け入れみたいなのがあればね。

確かに。あれは市役所が主体になって出したんですか。

市役所のホームページに載った。あと、さんデジにも載ったのかな。

地域的には倉敷市と岡山市で、まぁ真備町ってほとんど総社市なんだけど、総社市内での連携がもう残念で。僕の力不足もかなりあったんだけど、ある先生と結局最初から最後まで連絡とれなくて、病院に何頭預かってるとかの情報を一切わからない状況で結局今に至ってる。あそこは総社市の中核病院で、入院施設も多いんで、すごく機能して欲しい、相談もしたいっていう病院だったんだけど、結局やっぱりつながりがないと。僕と江口先生と日出美先生は常に連携をとって、総社市に呼ばれても3人で行ってたんだけど、そこにも現れてくれなかったりだとか、くやしい思いをしました。

あと倉敷だったら大学があって、ある先生と話をしたら、協力できるところは協力したいんですって言ってくれたんですけどその話が果たしてそっちに通ってるのかなとか。獣医師会の方とちょっと相談してみてくださいって話はしたんだけど。

その先生の一存では決められないでしょ。

そう、一存じゃ決めれない所を今回の反省として大学施設で、今回と同じことが今度あった時に大学としてっていう話を持っていったりした方がいいと思うし。

大学のトップがあかん言うたらあかんやん。

いやだから、トップがあかん言うたらあかんじゃなくて、そういうことが実際あったわけだから、大学にはせっかく施設もあるし、あそこに勤めてる獣医さん達は岡山県の獣医師会に入ってるわけだから、そこともそういう提携をしときましょうねっていうのを今回の反省点として挙げていくっていうのを。

ああ、準備としてね。

ま、確かに、ノーって言ったのかもしれないですね。リスクは負わない、負えないって。

お金稼げないからね。

(受け入れ)施設を分散させるような取り組みっていうのはほんとちゃんとしておかないと。さっきの伊達先生の15頭ってのを聞いてちょっとゾッとしたし、橋本先生が言った通りのことを僕も最初思ってたし、だからああいう時、ここもうパンパンだからって時に横の繋がりね、飼い主さんにあっちの病院まで行けるんなら行ってもらえませんかって。近いとこから埋まってった時に次の病院を紹介できるっていうシステムを作れたらって。

そうだ、僕の一番腹立ったこと、話していいスか。

うん(笑)

被災した子を預かってたじゃないですか。だからホテルをね、ちょっと断れないかと思って飼い主さんに電話したんですよ。直前くらいになって電話して、もっと早く言っておけば良かったんですけど、「こうこうこういう事情で」ってお願いしたら、まあそういう事情ならとかじゃなく「関係ねえ、前々から予約してる」って。腹立つ〜〜っ(笑)。何かすごいギャップがあって、腹立ちましたね。くやしかった。

「知識のない善意は暴力と一緒」

僕らが今やろうとしてるのは獣医療、動物に関わることで、それで岡山上げてこうってことになってくれば、今後はペットホテルとかペットショップとかも巻き込んだ形でいけた時にはそんなに困らないのかなとは思うんですけど。まあ信用的にはやっぱり獣医師がいるとこの方が安心だけど。病気が起こってるかもしれないのでね。

それぞれみんな、ボランティアさんも含めて「預かりますよ」ってやってましたよね。ただ獣医師会とはつながってなかった。

そこはたぶんこれからつなげていかないとなんない課題なのかなとは思いますけど。

知識のない偽善は暴力と一緒で、ペットショップさんとかも善意で預かります預かりますっていうんだけども、問題が起こった時にじゃあどうするのってところは僕らがフォローワークできるような連携があればいいんだけど。どこか岡山市のトリミングサロンかどこか、ま、善意だよ、善意で、まび動物病院の看板に貼り紙バーンってして「無償で預かります」みたいな。それを見た阿美古と水谷がぶち切れちゃって。

切れるね(笑)

そう、めっちゃ電話して、どなりあげて。そんなこともあったんですよ。

それって無断で看板に貼り紙して?

そう。

すげーなー。

すごいね。

で、後からケツ持ちみたいな人から俺に電話かかってきて、これこれこういうわけなんですって。

それ、きっと気持ちがあふれちゃったんですかね、彼らは。まあ、悪いつもりはなかったんだろうけど。こっちとしては迷惑だよね。

だから、知識のない偽善はほんと危ないから。

そんなんあったんだね。

あった。そういう輩が横行して。ま、ヤカラっていわれちゃうよね、そういうやり方してたら。

確かにそのあたりは色々な善意が渦巻くことっていっぱいありますよね。

うん、それをさ、正しい善意に持ってってあげないと。動物に関連することくらいは。

ありがたかった支援

ありがたかった支援っていうことでは、やっぱり、励ましのメッセージとか結構ありがたかったです。

へー

やっぱうちの場合、僕だけのことで言うと、後ろ向きになれない立場だったんで、みんなを前を向かすことに全力注いでたんですけど、で、どっかに自分を置いていたんですけど、その置いていた自分を励ましてくれて…。「あ、いいな、オモイ」って思いましたよ。

え!? あ?僕ら?

そうそうそう(笑)

あ、そう、そうなん、良かったー。

でも…俺は何も言ってねぇよな。

いやいや、先生も言ってましたよ。グッとくるやつ(笑)

なんか言ってた?

結構言ってましたよ。

あの頃くらいから何かおかしくなったんじゃない?

確かに。キャラチェンジしてる。

そうかもしれない。もしかしたらあれが小野を変えたきっかけかもしれない(笑)

支援って言えば、うちで手術した子で手術の時に買ったペットシーツとかがあまってるからって「先生、これ被災のところとか、先生のとこで預かってる子に使ってください」って言ってきてくれた患者さんが三人くらいいた。気にしてくれてる患者さんもすごくいるんだなって。同じペットを飼ってるってことでね、そういうのもすごく感じたり。

そうね、今逆に支援物資っていうのもなんかいろいろね。必要なものだけくださいってなってますよね。

物資はほんと余るみたいですね。何であんなに余るんですかね。

それね、巡回診療に行ってわかったんだけど、学校ごとに全然違うの。あるとこでは足りません足りませんって書いてあって、かたや他のところでは鬼のように積んであったりする。そこはだからたぶん部隊がきちんとしてて、そこを仕切ってる人が情報も仕切ってて。陣頭指揮する人によってこうも差が出てくるかと。

ただ情報が正しいのかも、よくわかんなかったですよね。足りてるから要らないっていわれてもほんとだったのかなとか。

ああ、実際に情報発信できてないっていうのは確かにあって。足りてない地域まで情報が行き届いていないとかも。うちの診療圏内で岡山市の菅野っていう地域があるんですけど、そこの一本道が完全に閉ざされて車も何も使えない、孤立してる、でもその情報すら入ってこない。

そういうのはすごく感じた。真備がああいうふうになって、まあ、メディア的においしかったのかもしれないんだけど、総社の北の方とかは高梁川、氾濫も決壊もしてないんだけど、普通に水位があふれちゃって全部浸かってんの。美袋(みなぎ)とか川沿のあたり、全壊で。氾濫するんじゃなくて普通にあふれちゃってて。そういうのは一切何の情報もなかった。

被災〜その非日常世界で

実際に被災した動物たちの心の変化みたいなのってありました? 診療してて。怖くて寝れなくなっちゃった子とか、下痢がとまらなくなっちゃったとか、感染症とか。

ダニ、いやノミか、ついたって。たまたまですかね。それぐらいです。

そうだね、うーん、動物達よりは飼い主さんの方がナーバスになったね。

うんうん。

飼い主さんはやっぱりすごい変わった(変化した)人が多い。身なりから乗り物から衝撃的なくらい変わった人もいましたね。

うちで預かった子はみんな良い子でナイーブな子いなかったからすぐ慣れた。飼い主さんの方が逆に気を遣われる。低姿勢というか、すいませんすいませんって。いや、すいません言うてる場合じゃないでしょ、そんなん気にせんでください、とりあえずご自分のことを大事に、動物のことは何とかしますからって。気にせんでいいのにって思いましたね。獣医師会も色々やってくれてるし、いいですよって。

でも太郎くんのとこと、小野先生のとこ、藤岡先生のとこにも(だて動物病院で預かりきれない子達を)送らせてもらったけど、送ったあとの安心感はやっぱすごいありましたね。ああ、ちょっとラクになった〜って。当時ね、うん、結構救われました。あの時、太郎くんに受けてもらえなかったら、俺ね、たぶん死んでた(笑)

伊達先生から送ってもらった子のとこは5匹飼ってて、その子達はもう水が上がってきた時に、畳の上に浮いてたって。結局ずっとたぶん畳の上に載って浮いてて、そこにたまった泥水を飲んで生きてたからだと思うけど、こっちに来た時にしばらくはごはん食べなかった。だから点滴したりとかしながら段々慣れてって。最初、熱中症ぽいかなと思ったんだけど、ずっと畳の上に載ってたから相当疲れてたかなと思うけど、1週間くらいしたらしっぽ振ってくれるようになってよかったなと。

何かね、救われるというか、健気というか、純粋で。動物は人間と違ってヘンな精神的な落ち込みとかもないし、逆に励まされるというかね。見てて。

そうね。一人預かってた子で、今は広島の方に移られて、Facebook通じて「元気にしてます、スタッフの皆さんによろしくお伝えください」って写真送ってくれてすごいよかったなと。ただ自分に余裕があったから受け入れられたなとも思ってて。自分に余裕がなかったらそれだけの善意は出せないなというのもちょっと思いましたね。その時には、助けて欲しい時には「助けて」ってきちんと言ってと思うけれども、それを今回伊達ちゃんがやってくれて、僕らも受け入れられたから良かったけど。実際いやな話をすると、もっとひどい被災の時には動物って二の次になる可能性があるかなと思う。その中で(自分の)命よりも大事だと思ってる人もいればね、まず自分の命っていうね、マズローでよく表現されてるようなところの段階まで落ちた時に、どうなるのかとかね。獣医とかそんなことじゃなく、人として生きれるかどうかみたいな状況。ま、日本沈没しない限り大丈夫かなとも思いますけど。

脱走してた子とかもいましたよね、真備行った時。普通にそこらへんに。

そう、首輪つけたのが歩いてた。

逃がす人もいるだろうね。もうちょっとムリだから放とうみたいに。

保健所の先生はそれを何とかしないとなんないから気にしてた。(見かけたのは)どこだった?って。やっぱ噛んじゃったら大変じゃないですか。それはとにかく気にしてました。動物を嫌いな人がいるっていう認識。そっちを気にするって。動物好きな人達の何とかしてって思いもそうなんだけど、そういう人達が入ってきた時に出るひずみみたいなのを気にしていかないといけないって。難しいですね。動物中心には考えられないですからね。

被災とおカネ

金銭的なダメージとか保険の話ってとこではどうです?

金銭的なダメージ。値ですか?

値です。

今日ね、出してもらったんだけど…3,200万。

ああ。

保険…は一切入ってない(笑)。あ、建物の共済みたいなのは家主が入ってたみたいだけど、法律上のは何もでないんですよ。どれにも該当してこない。中小企業に対する補填みたいなの。やっぱ家屋とかが優先になってくるから、何メートル浸水とかっていっても、どこをどう突いても。中小企業の特別枠みたいなのも色々調べてくれたけど、あそこは借りてた場所なんで、結局一言、「出ません」って。

保険とか関係なく法的なことね。今回の例えば倉敷市が集めた募金とか、岡山県が集めた募金がまびに入るかとかは?

あ、それはまだわかんないですね。ただ市民優先だし、中小企業って一番最後だし、とてもとても回って来ないでしょ。

結局、自分でどっかの保険に入っとかなあかんってことか。

水害含めて。

水害、入ってます?

入ってない。あのあたり比較的農転して新しいおうちが建ってるんやけど、結構入ってない人多いらしい。

だってまさかだもん。

でも何かあそこあたりって30年にいっぺんくらいちょこちょこあったらしいけど、でも知らないからな。

いや、前にあったのは50年くらい前なんだけど、知ってる人達は高台に建ててるから。

ああ。

それはもうほんとよく言われる、患者さんから。

入ってない人はもうおじゃんで、建てて4年か5年で水害にあったらローンだけが残るっていう。

被災と予防と飼い主啓発

感染症の予防をしましょうってのはやっぱある。ノミ、マダニ、狂犬病も。

狂犬病も結局、打ってるか打ってないか、そこで打つのかとか、獣医師会の話し合いでも出たけど、避難所でじゃあ打ってない人に打ちますよってなったら利益がどうのこうのとかいう話も出てきたりして、そういうことをなくすんだったらやっぱり予防関係はしっかりやっておかなきゃっていうのと、あとは、今回うちで預かった子はおびえちゃってた子がいたりとかして、やっぱり「社会性」を身につけさせるってこと。(避難先では)どうしても攻撃的になってくる子も多いんで、そういうことがあった時に、猫ちゃんはちょっと大変かもしれないけど、犬はちっちゃい時から社会生をしつけで身につけさせる、心がけるってことが大事かなと。

トレーナーさんのお仕事になっちゃうかもしれないですけど。

それでもいいし、各病院さんでやってるパピー教室だったり、そういうのに参加してもらうってこと。ただのしつけじゃないよ、そうなった時にこうなんだよってことをひとつ加えてあげるだけでも「あ、参加してみようかな」ってなるかもしれない。今回岡山でこういうことがあったってことで、そういうのもちょっと意識してもらえるようにしたらいいんじゃないかな。

被災だ備蓄だっていうのは今月のアズのテーマにもなってた。でも俺らは法律のもとで獣医師っていう国家資格を与えられてるわけだから、法律に縛られてる動物しか守れないってのがあるし。狂犬病ってちゃんと打ってちゃんと届けてくれればやっぱり有利だよねっていうことを訴えるべきかなと思う。自分らが対応できるかどうかか決まっちゃうくらい大事なことなんだと。ちゃんと打ってちゃんと届け出しておいてくれたら力になりやすい。それは確かなこと。

うん。

何も届けてなくて、ずっと室内飼いですっていわれてもね。やっぱ災害になるとオフィシャル性が求められるようになるじゃん、僕らの立場って。そこは勝手やったらダメじゃん。

まあね、レプトスピラも含めてね。

でなかったよね。

うん、でなかった。あれが一番怖いよね。人間にもうつるし。

非常用電源対策

皆さん、してます?

あ、うちありますよ。前に手術してた時にカラスかなんかが電線に巣つくって、ドーンて落ちて、院長に電話しなきゃって思ったら、麻酔機からも、あと、屋外からもすげー音がしだして、非常用の電源。

うちもこないだ停電して。診察台が漏電してて。

まじ?

診察台自体が漏電してたの。

でっかいアースになったの(笑)?

そう。そっから全部だめで。ま、ちょこっとは点くんですよ、ちょこっと冷えるくらいは。ただ自家発電機までは入ってなかったんで酸素室が使えない、ICUが。電気がないとほんと何もできないですもんね。

僕が(まびに)ケ○ヒャー持ってった話、あのときほんとにこれだ!! めっちゃ使えると思ったんですよ。今だ!! 俺はこの時のために買ったんだって思って持ってったんですよ(笑)

爆笑

電気? ないよ〜って(笑)。

これからの課題とオモイ

今回の西日本豪雨の被災に関してはたぶんたくさん学んだことがあると思うんだけど、僕自身、あ、これは今後の、災害が起こった時だけじゃなくて僕たちのネットワークのありかたであったりとか、災害以外の協力体制であったりとかで結構考えさせられるところがあった。まず初動が早かったっていうのはすごく良かった。リーダーシップ。それは太郎ちゃんのお母さんとか中村先生とか。まず初動がうまくいかないと、何も始まらないんで。それからあとのメンテナンスはレスポンス見ながら対応していけばいい。でさっきの話にもありましたけど、各獣医のグループの中でもリーダーシップをとってやっていく人達が手をつないでやっていかないとちゃんとした獣医療は進まないなと思ったんですね。それは災害にも、また僕たちが今いる獣医療にも通ずるところかなと思うんで。今回は人道的な支援が必要だったから重い腰を上げた先生ももしかしたらいたかもしれないけど僕らはそういう人達を同じフィールドに持ち上げてきてこういった医療をやりましょうってことでコンセンサスを得てやっていく。こういう会を、会社をつくってるんだから、それが一番大事なことなんだと思う。リーダーシップとネットワークとチームワーク。「人」だからなかなか難しいとこはあるんだけども、こういった災害の中で学ばせてもらってるっていうのはありがたいと思うし、伊達先生のとこはすごく大変だったと思うけども、でもこういう大変さの中で僕たちも伊達先生も学んだり、新しいチャンスが生まれたこともたくさんあったと思うから、決してネガティブにとらえる必要はなくて、もっと高みを見ていってもいいんじゃないかなと思う。これからの僕たちの取り組みっていうのはそういう重い腰を上げてくれるような先生を巻き込んで、ちゃんと波を起こしていかないとなんないんじゃないか。そのためには魅力的なイベントであったりとかサービスとかを考えていかないといけないかなと。

そうですね、僕もすごく思いますね。連携以上の何かっていう形は今後あってもいいのかなと。今回みちの先生が動けたのも、太郎くんに病院をほぼ譲っていて余裕のある立場、なおかつ力があって、発想力があって行動力があって、全部揃ってる先生だからあれだけできた。じゃあみちの先生がいなくなって、みんな個々で開業してって時にあんなことをやれる先生がいるかっていったらいないですよね。だからオモイの病院でもそうですけど、余裕をもったみんなで経営ができたりすれば、そういう時にどんと先生達を派遣したりだとか、獣医師会と連携して対策本部をつくったりとかできちゃうと思うんで、つながり以上の経営的な連携も含めてやれていれば、中核・中核・中核で近くの病院がポシャッたとしてもその獣医さんの仕事は近くの中核病院で自由にやってくださいと。それができるようなればすごくいいと思うんですよね。

今回のことで一番大きかったのは「つながり」ってのが絶対あったと思いますし、これからもみんながつながっていけるようにやっていかなければっていうのも学びかなと思いますね。

被災にどっぷり浸かった先生もいたし、僕らは同じ倉敷なんだけどもうちょっと静観して一歩引いて見てるとこもあって、対応はするけど何していいかわかんないっていう状況を経験してるし。でもひとつは被災を経験して「人とのつながり」っていうのをキーワードにして、僕たちが、オモイが、何をやったらいいのかってことを、この大変な経験を一つのステップにして次のステップに行くいい機会でもあると思うから。

確かにひとつのリスク(提示)になりましたよね、開業の。わかりやすいリスク。なんとなく開業って考えてた人にとって、開業ってこれだけのリスクもあるんだよってことが言えるし、言っていいと思う。開業すんなってことじゃなく、だから一緒にやっていこうとか。いい経験できたのかなと。

今の意見の真逆をいくと、やっぱり経営者って孤独なんだなと思うんですよね。被災を受けた時に一人獣医師のとこやったら宙ぶらりんになってしまう。もちろん手助けはあったとしてもやるのは自分やから。自分が何かせんとあかん。そんなこと色々イメージしてて、自分がそうなったらどうするんやろって。

俺が守ります!!

5万くらい出します(笑)・・・一年で。

いや、最低賃金くらいは守ってぇ(笑)時給781円! ※平成30年9月18日現在

でもほんと考えましたね。最低、自分の身は自分で守るみたいな。開業する以上、そういった覚悟というか決意は必要やと思う。まさに今日、(自分の病院の)火災保険の満期迎えてまた新しく5年契約したんやけどいくらか増額になるけどとりあえずのせとこうと。俺、被災したら獣医辞めると思うし。もう無理や、また一からこんな機械揃えたりするのは。俺は昔から結構そういうふうに思ってて、腕一本なくなったらそれでもう獣医の仕事はできんから、他のスキル身につけとこう、オールマイティな人間になっとこうって。また逆の考え方もあると思うんよ、獣医のスキルをめちゃめちゃあげておけば何かあった時にどこでも雇ってもらえる、みたいな。そういうふうに考えるのもあると思うし。いずれにしてもそれくらいの覚悟と決意は要るかなと。自分を守るのは自分やし。全体的な取り組みもそうですけど、個々人のやっぱ、本田圭佑みたいなこと言いますけど、個人の能力をねっ!!

ちゃんとオチまでつくるようになりましたよね。

本田圭佑、出す?

すごいスね。

ちょっと若干収拾つかなくなったかなと思ったら(笑)

来たわ。髪切ってから変わった(笑)…。ま、これからもおそらく僕たちはずっと被災を受け続けると思うし、日本って何千年もそういう国で、そこから立ち直ってきて今の日本があると思うんで、未来のこと考えて備え、蓄え、しておくことも大事だし、つながっておくことも大事。僕たちとしては岡山に対してそういうつながりをつくることができたらなと思うんで、それをしっかり形にすることができたらなと思いました。

オモイを、カタチに。

オモイをカタチに。

オモイをカタチに。ガチ対談、「絆」編でした。

第1回ガチ対談:2018年9月18日
場所/アイビー動物クリニック